in陰扉door_novel_4

暴君と天邪鬼




俺の王国の王女は大変美しく、凛々しく、気高く、しかし暴君であった。
彼女の命令は素っ頓狂で、筋が通っているとは思えない。
しかも気分によって変わる。
命令に背けば殺される。
しかしそれが本当かどうかは分からなかった。
なぜなら今までに命令に背いた奴はいないからだ。
なんでだって?
王女が美しいというのも理由のひとつだ。
彼女にお願いされると、思わず聞いてあげたくなっちゃう、らしい。
しかし俺が思うに、一番の理由は王女が女だからだと思う。
この王国の唯一の女。
他は全員男なのだ。
あの女の前では、男は皆イエスマンになる。

「チャーチル、どうして彼女のいうことを聞くんだい?」
「理由は君だって分かってるんだろ?」

「それじゃあ君は、彼女の言うことを、聞かないことができるかい?」
「おうとも、俺は天邪鬼だからな」

俺は王女のいる城に向かった。
天邪鬼ってのは、やれと言われたらやりたくなくなり、やるなと言われればやりたくなる。
それが俺の性質だった。
彼女は聞いた。

「跪きなさい」
「やなこった」

彼女は黙った。
俺は殺されるのだろうか。

「おやつの時間よ」
「それが?」

彼女は形のいい眉を上に上げた。
大きな瞳が歪められる。
それでも尚美しい。
計算されたような美だ。

そのとき、横からすっと青年が出てきた。
見るからにやつれた、捕虜のようななりの青年だ。
おそらくこの前の侵略で捉えられたのだろう。
しかしそのときの傷だけでなく、明らかに後から付けられた傷があった。
王女の趣味によってであろう。

「わらわの質問に答えるがよい」
「やだね」
「はい」

「そなたらはわらわの事を愛しているか」
「まさか」
「はい」

「足をおなめ」
すると驚いたことにその青年は王女の足を舐め始めた。
なんてこったい。
青年は女王が許すまで舐め続けた。
その時の女王の顔といったら、俺は胸が大きく高鳴るのを感じた。
そして最後に、女王は言う。

「嘘をついているのは、どちら?」

俺は答えることが出来ず、次の日天邪鬼の首は飛んだ。
言葉通り空を舞い、女王の白い肌を鮮血が彩ったという。

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