in陰扉door_novel_3




前略
お母様、お元気ですか?私は元気です。
長い間お手紙が出せなくて、申し訳ありませんでした。高校に入学してから色々忙しく、ゆっくりお手紙を書く時間が無かったのです。
お母様、高校は素敵なところです。
素敵なお友達、素敵な先生。
けれど、私はあまり好きではありません。
私の通う学校の校則は、とても厳しいのです。
膝下十センチのスカート、三つ折の白靴下、同じ三つ編み・・・だってね、お母様。校則の冊子だけで、八十ページもあるのですよ?
勿論校則ですから、私はきちんと守っています。
心配なさらないで。
さて、お母様はよく恋愛の素晴らしさについて私に語って下さいましたね。
お喜び下さいお母様!
私は遂に胸の高鳴りというものを実感したのです。
彼と出会った途端、私の頭からつま先まで、まるで電流が走ったように震え、私は立ちすくんだまま動けなくなってしまったのです。
嗚呼、なんて素敵な横顔!
一声かければ良かったのですけれど、私は恥ずかしくて出来ませんでした。
その恥ずかしさといったら、言葉には表せません。
強いて言うなら(あまりロマンチックな言い方ではありませんけれど)まるでゆでだこになってしまうような気分でした。
甘酸っぱく、とても恥ずかしい。けれど不思議と悪い気持ちではない。
これが、恋というものなのでしょうか。
お母様がお父様と出会った時も、こんな気持ちだったのでしょうか。

え、お相手ですか?
けれど私はあの方についてはまだ何も分からないのです。
分かっているのは、飯田橋駅に住んでいらっしゃること。
それから突飛な格好をしてらっしゃること。(金髪に、パジャマのような黒とオレンジの服を着てらっしゃるのです!頬には髭のようなものも生えておりますし・・・)
そして、語尾に「〜ってばよ」をつけるお方だということ。
これだけなのです。
けれど、飯田橋駅は私が塾にいくとき毎日使用する駅なので、私と彼は毎日会えます。
彼は、看板の中から動きませんし。

お母様、私はお母様の知恵をお借りしたいと思います。
彼について、どうやったら知ることが出来るのでしょうか。
美津子は、とても悩んでいます。

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