in陰扉door_novel_1

第三章 恋・乞い・故意_4




悲鳴がしたのは私たちがいたすぐ後ろだった。
振り向くと、さっきまで枯葉やら茂みがあった場所がぽっかりとあいている。
そこは、崖になっていたのである。
隠れて見えなかったけれど、私たちが数歩後ろに下がれば、落ちてしまっていたのである。
そして実際にそうなってしまった人がいた。
「新井さん!」
私と同室の新井という女子だ。
崖の周りには、同室の女の子たちがいる。
どうやら雑談していたところ、新井さんが落ちてしまったらしい。
急いで覗き込むと、彼女が必死に近くの草や樹の根っこにしがみついている。
しがみつくところは多いが、あまり持ちそうにない。
それは彼女自身についてもそうで、彼女の顔を見ればそれは明らかであった。
「新井さん、つかまって!」
私は出来る限り伸ばせるだけ手を伸ばした。
幸い、丁度手の届くところに彼女はいる。
後ろには木下くんも松岡くんもいるし、彼女さえ手を伸ばせば引き上げることができる。
「新井さん!」
彼女は泣きそうな顔で首を振った。
けれど彼女が掴んでいる根っこが、ミシミシと音を立てている。
(これは・・・落ちるフラグ?)
私は少し舌打ちして彼女の腕を無理やり掴んだ。
そして落ちないように必死に支える。
しまった女子がやるより男子がこの役はやった方が良かった。
後悔するが、もう遅い。
「くっ・・・・・・」
歯を食いしばる。
何だか、後ろが騒がしい。
先生だ、逃げろ、とか聞こえるかたきっと肝試しがばれたのだろう。
ってこんな必死なときに何を考えているのか。
人はこんなときこそ冷静になれるのだと、思った。
「ううらああああああああああああ」
彼女を掴んだ右手に全体重をかける。
肩がバキバキっと鳴った。
日頃の運動不足が原因だろう。
これから毎日トレーニングしよう。
「ああああああっ」
掛け声と共に、彼女を思いっきり引っ張りあげる。
最後は自分の両方の手を使い、私たちがいる地面へと彼女を転がすように引き上げた。
新井さんは地面へ倒れこみ、肩で息をしている。
そして私は
(いや、こうなるってなんとなく分かってたんだけど・・・)
彼女を引き上げた反動で、体はバランスを崩し、その方向は崖へと傾いていった。
バランスを戻そうにも、足を動かせばそこは崖だ。
かなりギリギリまで近付いて、彼女を引きあげていたのだと気付いた。
木下くんたちが気付いたのは、若干遅かった。
もう体は半分以上下・・・・・・

「愛っ!!!!」

集まってきた人々を掻き分けて、一瞬で視界に現れた影があった。
伸ばされたその手は、私の腕でなく後頭部へと回される。
「け・・・」
熱い胸板から、彼の汗とボディーソープのにおいを感じた。
(家から石鹸持ってきたんだ)
剣と私は、互いを守るようにして、転がり落ちていった。

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