in陰扉door_novel_1

第三章 恋・乞い・故意_3




肝試しが終わり、墓場を抜けたゴールでは、明らかに皆の関係が変わっているように見えた。
お互い肝試しの間繋いでいたのだろう、その手を終わってもまだ離さなかったり、お互いずっと見詰め合っていたままだったり。
私たち・・・私と松岡くんはとうにその手を離してしまっていた。
残念じゃなかったといえば嘘になる。
私が松岡くんに惹かれていたことは確かなのだ。
けれど彼が木下くんのことを、少なくとも友人以上に思っている。
そんなことが松岡くんの表情に読み取れたことで、さっきの気持ちは一時的なものだと、はっきり冷静にとらえることができた。
(そうあれは・・・祭りマジック!!)
その場の雰囲気に流されて、相手のことを好きになったと思い込んでしまうことだ。
まあ結局のところ、私は今のところ恋愛より友情が大切だということ。
それがあっただけでも、この肝試しは有意義だったといえるか・・・・・・。


「木下!」
木下くんの姿を見つけた松岡くんは、そう言うと彼の方へ駆けて行った。
彼のペアの女の子はもうどこかへ行っていて、地面にしゃがみこんでいた。
暗くて良く分からないが、特に何も考えていないような、ぼーっとした表情をしていた。
「ま、松岡」
走ってきた松岡くんに、木下くんは驚いたようだった。
「木下くん」
「あ、天音ちゃん・・・さっきはごめん。天音ちゃんが悪いわけじゃないのに」
「ううん、気にしないで」
私も悪いところはあったし、と心の中で付け加える。
(多分、上手くいくよ)
「頑張ってね、木下くん」
そういうと、予想通り彼の顔は真っ赤になった。
にこにこと笑いかける私と、真っ赤な木下くんの間で、松岡くんはおろおろするばかりだ。
多分、松岡くんは私が思っていた以上に可愛い男の子。
そんな彼と私の友人、木下くんを、心から応援したいと思った。
(・・・・・・ホモだけど)
全ペアが戻ってくるまで、私たちは暫くこのまま待機らしい。
全員一緒に帰ったほうが、教師陣に見つかるリスクが少ないからだ。
教師の巡回時間は、前もって調査済みらしい。
その情熱をどこか他の方向へ向けて欲しいものだ。
「それにしても、以外と天音さん、男らしいんだね」
突然松岡くんが言った。
「お、男?」
「な、いつも言ってる通りだろ?サバサバしてるって」
木下くんも同意する。
「うん、もっと喋りにくい人かと思ってたよ。誤解してごめんね、天音さん」
「ど、どうも・・・」
「天音ちゃんでいいって」
って何であんたが言う、木下くん。
じゃあ、天音ちゃん、と言った松岡くんのさわやかな笑顔と、まるで自分が呼ばれたみたいに嬉しそうな顔をする木下くん。
二人してえへへ、なんて笑っている。
可愛い奴ら・・・
(でもついていけないわ・・・)
「そうだ、天音ちゃん。明日の自由行動、誰かと一緒に回る予定ある?良かったら・・・」
「うん、他の奴らもいるけど」
そこで私は名案を思いついた。
「・・・実は私、男の子って苦手なんだ・・・」
「えっそうなの?」
「・・・・・・」
「だから、出来れば行動するのは、木下くんと松岡君のお二人ト・・・あっ、ごめんこんな図々しいこと」
「いいよいいよ、どうせいつも一緒に行動していてもバラバラになるもんな!なっ、木下」
「お、おう」
そしてしばらく経ったら、邪魔者の私は消えて、二人っきりの世界を楽しんでもらおう。
そんな私の思惑が伝わったらしく、木下くんは松岡くんに気付かれないようパクパクと口を動かす。
『キャラ・か・わっ・て・ん・ぞ』
私は人差し指を口に持ってゆき、
『さっ・き・の・お・わ・び』
と同じように返した。
木下くんはもう早々に赤くなっている。
さては明日の行動を考えて、だな。
「ところで・・・」
と松岡くんが切り出し、次の話題に移ろうとしていた時。


「きゃああああああっ」

私たちのすぐ横で、悲鳴が響き渡った。

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